カスハラ対策義務化!クレーム一次対応マニュアルの作り方
2025年カスハラ対策義務化に備えたクレーム一次対応マニュアルの作り方を解説。現場スタッフを守る仕組み作りの具体的な手順を紹介。

カスハラ対策義務化の背景と概要
改正労働施策総合推進法等(令和7年法律第63号)により、事業主にカスタマーハラスメント(カスハラ)対策の措置義務が新たに課されました。施行日は政令で定める日(公布から1年6か月以内)とされ、一部規定は令和8年4月1日施行予定です。この法改正により、企業には従業員をカスハラから保護するための体制整備が義務付けられます。
カスハラが法規制の対象となった背景には、深刻な被害実態があります。厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査(令和5年度)」によると、顧客等からの著しい迷惑行為を経験した労働者の割合は10.8%に上り、パワハラ(19.3%)、セクハラ(6.3%)に次ぐ深刻なハラスメント類型となっています。特にサービス業・小売業・医療福祉業ではメンタルヘルス不調や離職の大きな要因となっています。
カスハラ経験率
10.8%
厚労省 令和5年度調査
パワハラに次ぐ
第2位
ハラスメント類型
施行予定
令和8年4月
一部規定
この記事の結論(先に要点だけ)
- 改正法(カスハラ措置義務)への対応には、4段階レベル分類と明確なエスカレーションルールを備えた一次対応マニュアルの整備が不可欠
- 対応フレーズの標準化・研修の定期実施・半年ごとの見直しの3つで、マニュアルを「使われる仕組み」に変える
- 証跡管理はデジタルツールで仕組み化し、法的リスク対策・再発防止・従業員ケアの3つを同時に実現する
法令で求められる企業の義務は主に以下の4点です。
- 方針の明確化と周知:カスハラに対する企業方針を策定し、従業員・顧客双方に明示すること
- 相談体制の整備:従業員がカスハラ被害を相談できる窓口を設置すること
- 事後の適切な対応:カスハラ発生時に被害者保護と事実確認を迅速に行う体制を構築すること
- 予防措置:マニュアル整備・研修実施など、カスハラの発生を予防する措置を講じること
これらの義務に違反した場合、行政指導や企業名公表の対象となる可能性があります。しかし、義務化への対応は単なるコンプライアンスの問題にとどまりません。適切なカスハラ対策は従業員の心理的安全性を高め、離職率の低下やサービス品質の向上にも直結します。本記事では、カスハラ対策の中核となる「クレーム一次対応マニュアル」の作り方を、7つのステップで具体的に解説します。
クレームとカスハラの境界線
マニュアルを作成する前に、「正当なクレーム」と「カスタマーハラスメント」の境界線を組織として明確にする必要があります。この線引きが曖昧なままでは、現場スタッフが対応判断に迷い、結果として過剰な我慢を強いることになりかねません。

正当なクレームとは
正当なクレームとは、商品・サービスの不備に対する合理的な改善要求です。内容に正当性があり、要求手段が社会通念上相当な範囲にとどまっているものを指します。例えば「購入した商品が破損していたので交換してほしい」「注文と違う料理が提供されたので作り直してほしい」といった要求は、対応すべき正当なクレームです。
カスハラに該当する行為
厚生労働省のガイドラインでは、カスハラを「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義しています。具体的には以下のような行為が該当します。
- 暴言・人格否定:「バカ」「無能」「辞めろ」など、人格を否定する発言
- 威圧・脅迫:「SNSで拡散する」「訴える」「上を呼べ」と繰り返す威圧的言動
- 過度な要求:合理的な範囲を超えた金銭要求、土下座の要求、特別扱いの強要
- 長時間拘束:同じ内容を繰り返し、対応者を長時間拘束する行為(目安として30分以上)
- 執拗な繰り返し:解決済みの案件について何度も電話・来店する行為
- セクハラ的言動:容姿への言及、プライベートな質問、つきまとい行為
- 暴力・器物損壊:物を投げる、カウンターを叩く、身体的接触
カスハラ行為の内訳(類型別)
厚労省実態調査をもとにした主な行為類型の割合
暴言・人格否定
長時間拘束
威嚇・脅迫
SNS晒し・ネット中傷
※構成比は複数回答を含む参考値です。
グレーゾーンの判断基準
実際の現場では、正当なクレームかカスハラかの判断が難しいケースも多く存在します。判断に迷った場合の基準として、以下の3つの視点を持つことをおすすめします。
| 判断の視点 | チェック内容 | カスハラ該当の目安 |
|---|---|---|
| 要求内容の妥当性 | 要求している内容自体に合理性があるか | 商品・サービスと無関係な要求 |
| 手段の相当性 | 要求の伝え方が社会通念上適切か | 怒鳴る・暴言・脅迫的言動 |
| 反復性・継続性 | 同じ要求が繰り返されているか | 解決済みの案件を繰り返し主張 |
要求内容が正当であっても、手段が不相当(怒鳴る、長時間拘束するなど)であればカスハラに該当します。この判断基準をマニュアルに明記し、具体例とともに研修で共有することが重要です。
一次対応マニュアルの作り方(7ステップ)
ステップ1:過去事例の収集と分類
マニュアル作成の第一歩は、自社で過去に発生したクレーム・カスハラ事例を収集することです。直近2〜3年分の対応記録を洗い出し、「内容」「発生場所」「対応者」「対応結果」「所要時間」を一覧化しましょう。
収集した事例を、以下の4カテゴリに分類します。
| レベル | 分類 | 内容 |
|---|---|---|
| レベル1 | 通常クレーム | 商品・サービスの不備に対する合理的な要求 |
| レベル2 | 感情的クレーム | 不備は事実だが、強い感情を伴う要求 |
| レベル3 | カスハラ予兆 | 暴言や過度な要求が見られるが短時間で収束 |
| レベル4 | 明確なカスハラ | 暴力・脅迫・長時間拘束など |
この分類により、各レベルに応じた対応方針を体系的に整理できます。
ステップ2:対応フローの設計
各レベルに応じた対応フローを設計します。一次対応者(現場スタッフ)が判断に迷わないよう、フローチャート形式で可視化することをおすすめします。
基本フローは以下の通りです。
受付
お客様の話を傾聴し、状況を把握する(3〜5分目安)
共感表明
お客様の不快な気持ちに共感を示す
事実確認
何が起きたかを客観的に確認する
レベル判定
上記4段階のレベルを判定する
対応実行
レベルに応じた対応を行う
エスカレーション
レベル3以上は上長・管理者にエスカレーション
記録
対応内容を漏れなく記録する

ステップ3:エスカレーションルールの策定
一次対応者が一人で抱え込まないためのエスカレーションルールは、マニュアルの最重要ポイントです。以下のような明確な基準を設定しましょう。
- 対応開始から15分経過しても収束しない場合
- 暴言・人格否定が1回でも発生した場合
- 金銭要求があった場合
- 「責任者を出せ」と2回以上要求された場合
- 対応者が身の危険や強い精神的苦痛を感じた場合
エスカレーション先は、時間帯(営業時間内/時間外)や拠点の状況に応じて複数パターンを用意します。管理者不在時のバックアップ体制も明記しておくことが重要です。
ステップ4:対応フレーズの標準化
一次対応者が使う言葉遣いを標準フレーズとして整備します。特に重要なのは「クッション言葉」と「毅然とした断り表現」のバランスです。詳細なフレーズ集は次章で紹介しますが、ポイントは以下の通りです。
- お客様の感情を受け止める共感フレーズ
- 事実確認のための質問フレーズ
- 対応範囲を明確にする境界設定フレーズ
- カスハラ行為に対する警告フレーズ
- 対応打ち切りの通告フレーズ
ステップ5:記録テンプレートの作成
対応内容を正確に記録するためのテンプレートを作成します。記録は証跡として法的に重要な意味を持つだけでなく、再発防止策の検討や社内研修の素材としても活用できます。記録すべき項目は以下の通りです。

- 発生日時・場所
- お客様情報(氏名・連絡先、把握できる範囲で)
- 対応者名
- クレーム・カスハラの具体的内容(発言の記録を含む)
- レベル判定
- 対応内容と結果
- エスカレーションの有無と対応者
- 今後の対応方針
ステップ6:研修プログラムの設計
マニュアルは作って終わりではなく、全従業員に浸透させる研修が不可欠です。効果的な研修プログラムには以下の要素を含めましょう。
| 形式 | 内容 | 時間 |
|---|---|---|
| 座学 | カスハラの定義、法的背景、企業方針の説明 | 30分 |
| ロールプレイ | レベル別の対応シミュレーション | 60分 |
| グループディスカッション | 過去事例をもとにした判断練習 | 30分 |
| フォローアップ | 3か月後の振り返りと事例共有 | 30分 |
研修は新入社員研修時だけでなく、年1回以上の定期開催が推奨されています。パート・アルバイトスタッフも含めた全員参加が原則です。
ステップ7:定期見直しの仕組み化
マニュアルは半年に1回を目安に見直しを行いましょう。見直しの際には、期間中に発生した事例を分析し、対応フローやフレーズの改善点を洗い出します。法改正やガイドラインの更新にも追従する必要があります。見直し会議の日程を年間スケジュールにあらかじめ組み込んでおくと、形骸化を防げます。
対応フレーズ集(場面別)
初期対応(共感・傾聴フェーズ)
- 「ご不便をおかけして、大変申し訳ございません」
- 「お気持ちはよく分かります。詳しい状況をお聞かせいただけますか」
- 「ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません。すぐに確認いたします」
- 「貴重なご意見をありがとうございます。改善のために詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか」
事実確認フェーズ
- 「正確に状況を把握したいので、いくつか確認させていただいてもよろしいでしょうか」
- 「いつ頃、どのような状況で発生しましたか」
- 「レシート(お控え)はお持ちでしょうか」
- 「確認に少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか」
境界設定フェーズ(過度な要求に対して)
- 「お気持ちは理解いたしますが、当社の規定では○○までの対応とさせていただいております」
- 「ご要望にはできる限りお応えしたいのですが、○○については対応いたしかねます」
- 「上長に確認のうえ、改めてご連絡させていただきます。本日のところは○○で対応させていただけますでしょうか」
カスハラ警告フェーズ
- 「恐れ入りますが、そのようなお言葉はお控えいただけますでしょうか」
- 「大声を出されますと、他のお客様のご迷惑にもなりますので、お声のトーンを落としていただけますか」
- 「お気持ちは分かりますが、人格を否定するような発言は業務上お受けすることができません」
- 「このまま同様の行為が続く場合、対応を打ち切らせていただく場合がございます」
対応打ち切りフェーズ
- 「大変申し訳ございませんが、これ以上の対応は致しかねます。お引き取りくださいますようお願いいたします」
- 「繰り返しのご要望にはお応えいたしかねます。書面にてご回答させていただきます」
- 「お客様の安全と従業員の安全を守るため、本日の対応はここまでとさせていただきます」
電話対応の場合
- 「対応品質向上のため、通話を録音させていただいております」(冒頭で告知)
- 「お電話での解決が難しいようですので、書面にて改めてご回答させていただきます」
- 「30分以上お話しいただいておりますが、これ以上のご対応は致しかねます。失礼いたします」
証跡管理の重要性
カスハラ対策において、対応の証跡(エビデンス)を適切に管理することは極めて重要です。その理由は主に3つあります。
1. 法的リスクへの備え
カスハラ被害が深刻化し、法的措置(業務妨害罪・威力業務妨害罪・脅迫罪などでの被害届提出、民事上の損害賠償請求)を検討する場合、対応の記録が重要な証拠となります。「いつ」「誰が」「何を言った/した」が正確に記録されていなければ、法的手続きは困難です。また、顧客側から「不当な対応をされた」と訴えられるリスクに対しても、証跡は企業を守る盾となります。
2. 再発防止と組織学習
対応記録を蓄積・分析することで、カスハラが発生しやすい時間帯、状況、トリガーとなる事象のパターンが見えてきます。このデータに基づいて予防策を講じることが、組織としてのカスハラ耐性を高めることにつながります。
3. 従業員のメンタルヘルスケア
カスハラ対応の記録は、被害を受けた従業員のケアにも活用されます。「あなたの対応は適切だった」とフィードバックするための根拠資料となり、「一人で抱え込まなくていい」というメッセージを組織として発信する基盤となります。
証跡として残すべきもの
- 対応記録:日時、場所、内容、対応者、結果を時系列で記述したもの
- 音声記録:電話対応の録音(事前告知が必要)
- 映像記録:店舗の防犯カメラ映像(保存期間の設定が重要)
- メール・チャット:書面でのやり取りの保存
- 診断書:従業員がメンタルヘルス不調をきたした場合の医師の診断書
デジタルツールによる仕組み化
マニュアルの整備と並行して、クレーム・カスハラ対応の記録・管理をデジタルツールで仕組み化することを強くおすすめします。紙の報告書やExcel管理では、記録の漏れ・検索性の低さ・共有の困難さという問題が避けられません。
仕組み化による改善効果
マニュアル+デジタルツール導入前後の変化
対応時間
60%削減離職率
45%改善エスカレ漏れ
80%削減記録の抜け漏れ
90%削減※数値は一般的な運用改善の参考目安です。
デジタル化で実現できること
- リアルタイム報告:対応直後にスマホから報告を入力。記憶が鮮明なうちに記録を残せる
- 自動通知:レベル3以上のカスハラ報告時に管理者へ即時通知。対応の遅れを防止
- データ分析:発生傾向の可視化、対応品質のモニタリング、再発防止策の効果測定
- ナレッジ共有:対応事例をデータベース化し、全店舗・全スタッフで共有
- レポート自動生成:月次・四半期の報告資料を自動作成。管理工数を大幅削減
ClaimCatchによるクレーム一次受付・証跡管理
クレーム一次受付と証跡管理をワンストップで実現するSaaSとして、ClaimCatchが注目されています。ClaimCatchは「現場スタッフが30秒で報告でき、管理者は即座に状況を把握できる」をコンセプトに開発されたクラウドサービスです。
主な特徴として、テンプレートベースの簡易入力、写真・音声ファイルの添付、レベル自動判定によるエスカレーション通知、対応履歴の時系列管理、ダッシュボードによる傾向分析などが挙げられます。特にカスハラ対策義務化を見据えた証跡管理機能は、法令対応に直結するものです。
初期費用0円、月額費用もリーズナブルな設定で、中小企業でも導入しやすい価格体系となっています。30日間の無料トライアルで全機能を試せるため、まずは一部店舗や部署で試験導入し、効果を検証してから全社展開するステップを踏むことが可能です。
まとめ
カスハラ対策の義務化は、企業にとって「やらなければならないこと」であると同時に、従業員を守り、健全な職場環境を構築する絶好の機会でもあります。本記事で紹介した7ステップに沿ってクレーム一次対応マニュアルを整備し、デジタルツールで証跡管理を仕組み化することで、法令対応と従業員保護の両立が実現できます。
重要なのは、マニュアルを作成して終わりにせず、研修と定期見直しを通じて組織全体に浸透させ続けることです。また、記録の蓄積と分析を通じてPDCAサイクルを回し、対応品質を継続的に向上させていくことが、本質的なカスハラ対策につながります。
- 7ステップでマニュアルを整備し、研修・見直しで組織に浸透させる
- 証跡管理のデジタル化で法的リスク対策・再発防止・従業員ケアを同時に実現
- ClaimCatch の無料トライアルで、まず一部店舗から効果を検証する
まずは現状の対応体制を棚卸しし、本記事の内容を参考にマニュアル整備の第一歩を踏み出してみてください。証跡管理のデジタル化については、ClaimCatchの無料トライアルを活用し、自社に合った運用方法を検証することをおすすめします。